梅染め

梅染め

高島市針江は水路のなかにある。 琵琶湖北西の安曇(あど)川(がわ)下流域にひろがる、扇状地のほぼまんなか。丹波高地と比良山系を

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焼畑

焼畑

「今年のヤボ焼きは八月三日。ちょっとでも雨降れば、一週間の延期です」 電話の報せに、運を天候にゆだねて椎葉村までやってき

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藻塩

藻塩

夏野菜が美味しくなった。トマトは甘味が濃く、胡瓜は噛むと水気が爆ぜ、レタスはちぎるとわりわり音がする。皿に盛りあげた夏.

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鰒

鰒(あわび)は水深二十~五十メートルあたりで、荒(あら)布(め)や若(わか)布(め)や昆布などの海藻類を食べて育つ。主として夜行性で.

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竹

 「恥ずかしながら、生きながらえて帰ってまいりました」の言葉で、世間に衝撃を与えたのは横井正一さんだった。  二十八年間.

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勾玉

勾玉

 飾棚の上は、物でいっぱいになっている。素焼のピラミッド型の置物、赤いビロード袋に入った白い硝子玉、瓶入りの水銀、黒曜石.

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桜

 奈良斑鳩にある法隆寺西円堂には、薬師如来がまつられている。人びとから「峰のお薬師さん」と呼ばれ、親しまれている。毎年こ

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梅

 正月の床の間を飾った、紅梅の盆栽を庭におろした。十年経って幹は細かったが、大人の背丈以上にまで成長した。寒風のなか、

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遊女

遊女

 飛田新地は、大阪市西成区にある色街だ。  大正時代に築かれた日本最大級の遊廓といわれ、いまも一六〇軒ほどが料亭として店.

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2015年度 短歌講座のおしらせ

申し込み開始  一般 3/4(水)10:30~ 問い合せ:明治大学リバティアカデミー事務局 TEL:03-3296-4423 FAX:03-3296-4542 academy@mics.meiji.ac.jp .

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鰻

 熊野には大鰻がいる。  五年前の春、古座川中流域に住む男性の仕掛けた延縄(はえなわ)に全長一メートル、重さ四キロ、胴回り三.

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柿

 妖怪、タンタンコロリンは柿の実のお化けだ。宮城県の民話にでてくる。  ある寺の小僧のもとにきた男が、すり鉢ですった自分

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隼人

隼人

 大阪市の天王寺区には、二百ほどの寺や神社がある。なかでも谷町筋から松屋町筋にいたる界隈に、寺が集中している。今ではビル

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三女神と玉

三女神と玉

 御元山(おもとさん)(御許山)は宇佐神宮の御神体といわれている。昨年の冬、大分県宇佐市に住む友人の招きがあり、登ることが

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櫛

 櫛は髪を梳り、汚れをとり、髪に挿して飾るものとして、世界の人びとから慈しまれてきた。日本の黒髪に映える鼈甲(べっこう)や

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酒

 昭和二十七年ごろのお座敷唄に、「ヤットン節」があった。「お酒飲むな酒飲むなのご意見なれど、酒飲みゃ酒飲まずにいられるも

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刀鍛冶

刀鍛冶

 日本独自の和式製鋼法であるたたら(・・・)吹き(・・)を奥出雲で見たのは、二年前の冬だった。  木原村下(むらげ)(たたら責任

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鮎

 今も昔も水辺は変わらずにある。古座川の透明な流れを前にして、そう思った。  去年の九月の台風十二号の来襲に、熊野一帯は

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鬼

 葛城は奈良盆地の南西部にある。そこの御所市に一言(ひとこと)主(ぬし)神社があり、私たちは「いちごんさん」と親しんでいる。.

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水銀・伊勢国

水銀・伊勢国

 三重県の真ん中ほどの山間に、車を走らせた。ここは多気郡勢和村大字丹生。  丹生は名のとおり古代から、朱砂・辰砂・丹砂と

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水銀

水銀

 和歌山県の高野山麓、標高約四百五十メートルのところに天野盆地がある。  紀ノ川を南へ渡り、柿の畑をぬけ、星川沿いに上り

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木炭

木炭

 昔から炭焼き職人には、「鼻の悪いのと、せっかちは駄目」といわれる。窯のなかの原木の焼け具合は、煙の微妙な変化を嗅ぎわけ.

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ゆりまつり

ゆりまつり

樹々の緑がいちだんと暗く見えてきた。熊蝉や蜩(ひぐらし)がいっしょに鳴いている。 今年も初夏から山野をまわって、おみなえし

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遊行の民・遊び

遊行の民・遊び

 三重県のある山中に、卵型の大岩がある。 岩の表には太陽の力が、後には月の力がそれぞれ籠っていると伝承されている。ストー

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遊行の民・人形まわし

遊行の民・人形まわし

 祖父は生前、昔語りをよくしてくれた。  戦前の節分の話もそのひとつ。普段は人通りの少ない浜辺の辻から、にぎやかな声が近.

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地 震

地 震

 古来より日本の風土は、私たちの繊細な心を育んできた。湾になった白砂の海岸、深い渓谷にそよぐ照葉樹、火山の裾野の草など、.

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窟

二月の冬晴れのある日、友人のはからいがあり、へリコプターで山岳修験の大峯(おおみね)奥(おく)駈(が)け道を上空からたどることが

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鯨・遠洋捕鯨

鯨・遠洋捕鯨

「イルカと鯨の違いってなに?」と、よく聞かれる。動物分類学上は同じ仲間であり、イルカは体長五メートルまでのもの、そ.

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那智勝浦短歌大会

那智勝浦短歌大会

早くも2012年が明けました。 お元気にて本年を迎えられたことと存じます。 このたび御尽力をいただきましたお蔭にて、「聖な

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猪

 年末、熊野の古座川町の友人から電話があった。猟仲間と山へ入り猪を一頭仕留めたので、肉をわが家にも送ってくれるという。獲.

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鯛

 その昔、身分ある人は鰯を食べなかった。  「鰯」は「いやしい」に通じると、地位ある人ほど鰯を見下げていたという。たとえ.

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相撲

相撲

姉から小包が届いた。義兄が逝き六年、整理した遺品の一部が入れられてあった。私はそこから昭和六十年八月三日の、読売新聞のト

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橘

十一月三日は文化の日。芸術や科学の向上発展に、めざましく功績のあった人びとに文化勲章が授与される。その勲章には永遠や悠

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和琴

和琴

瀬戸内の海は、いつ見てもおだやかだ。道路のきわまで水位があり、たっぷたっぷ音をたてている。 九月初旬、広島県の福山駅から

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木炭·太安萬侶墓

木炭·太安萬侶墓

奈良盆地の市街地から東へ山間の道を車で三十分も走れば、稲田と茶山がひろがる田原の里に入る。県道から農道へ、北にすすむと

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蚕

琵琶湖の東岸に繖(きぬがさ)山がある。稲穂がゆったりそよぐ近江平野の、ちょうどまんなかあたりだ。約四三〇メートルの頂まで登

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たたら炉

たたら炉

「じだんだ踏む」という言葉がある。かんしゃくを起こし、はげしく地面を踏むようすをいうが、いかにもという響きである。地踏.

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戻り鰹とキイジョウロウホトトギス

戻り鰹とキイジョウロウホトトギス

絶え間なく降り続く初秋の長雨。 紀伊半島の南部にも遅い季の移ろいがやって来た。沖合いでは水温の低下にともなって鰹(かつお).

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辺境の地ヘ

辺境の地ヘ

 シイの花が白く咲き始める春、山の神に深く一礼をすれば「よう来たのら」と、郷に招き入れてくれる。    人よりも山猿どもの.

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ヒダル神

ヒダル神

黒潮うねる大海に日差しがかかると、冬もあおあおした照葉樹の山の谷底へもにぶく反射する。遠目にはやすらぎの冬の緑。だがひ

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古座川三種

古座川三種

 海岸線から直角に古座川(こざがわ)に沿って五分も車を走らせると、もはや山中だ。海の気配はすでにない。  降り出して二時間.

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丸山千枚田

丸山千枚田

棚田より五風十雨をことほげばわたしは石笛、楽鳴りいづる 龍神のお渡りと見え噴きのぼる霧に角ある風伝峠 ひとめぐりしたるもひ

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風伝峠

風伝峠

白地図を展(ひろ)げるやうに桜散り胸のファスナーわずかに下げる 糸とんぼ返し縫ひして沼しづかこの遊星にぐらりと立てば

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海霧とイセエビ

海霧とイセエビ

海霧が見たい。秋もふかまるとむしょうにそう思う。 海霧のニュースがながれたのは、去年は十月半ばが最初だった。ニュースのあ

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アカウミガメ

アカウミガメ

ザッ、ザッ、ザッ、ザッ、ザッ、ザッ 砂にさし入れた聴診器から、小さいが確かな音が聴こえる。産卵したアカウミガメの卵が埋め

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© 2009 Yomo Oguro